タンスの着物を整理していると、絵柄が肩から裾まで流れるようにつながった、華やかな着物が出てくることがあります。
それが訪問着です。結婚式や入学式で着たものや、お母さんやおばあちゃんが大事にしていたものも多く、「これはいくらになるんだろう」と気になりますよね。
ネットで調べると「訪問着は〜20万円」「〜80万円」といった数字が出てきますが、そのまま期待すると、査定の日にがっかりしてしまうかもしれません。この記事では、買取会社の公式サイトに載っている訪問着の買取例と、実際に売った人の口コミをもとに、訪問着の値段の幅と、査定額が変わるポイントをまとめました。
- 公式サイトの「〜20万円」「〜80万円」は上限で、ふつうの訪問着の値段ではない
- 人間国宝や有名作家の訪問着なら、10万円台の買取例がある
- 作家名がわかる訪問着なら、1枚で2万〜7万円ほどの買取例もある
- 工房物や辻が花の訪問着は、まとめて1万円前後という例もある
- 口コミに出てくる訪問着の金額は、1枚100〜500円という声がほとんど
- 落款・証紙・仕付け糸・身丈がそろうほど、評価されやすい
- 夏用の絽や紗、ポリエステルの訪問着は、値段がつきにくい
訪問着の買取相場はいくら?公式の買取例で見る値段の幅
まず、買取会社が出している相場の数字を見てみます。バイセルは有名作家物の訪問着を「〜200,000円」、ザ・ゴールドは「〜800,000円」としています。ただ、どちらも「〜」がついているとおり、いちばん高いときの金額です。
バイセルの数字は「有名作家物の場合」で、2025年11月時点の参考価格です。作家も産地もわからない訪問着がこの金額になるわけではないので、上限の目安くらいに見ておくといいと思います。
公式サイトに載っている訪問着の買取例
では、実際にはどのくらいで買い取られているのでしょうか。バイセル・ザ・ゴールド・福ちゃんの公式サイトに載っている訪問着の買取例を、金額の高い順に並べました。
| 会社 | 買い取ったもの | 買取金額 | 買取方法と地域 |
|---|---|---|---|
| 福ちゃん | 初代由水十久の本加賀友禅の訪問着 | 135,000円 | 出張 |
| ザ・ゴールド | 由水煌人(加賀友禅)の訪問着など | 128,000円 | 出張・京都府 |
| ザ・ゴールド | 羽田登喜男(人間国宝)の訪問着など | 115,000円 | 出張・滋賀県 |
| ザ・ゴールド | 二代目久保田一竹の辻が花の訪問着など | 115,000円 | 出張・大阪府 |
| 福ちゃん | 藤井寛の訪問着(秋篠宮妃献上柄) | 71,000円 | 出張・徳島県 |
| ザ・ゴールド | 柿本市郎の本加賀友禅の訪問着など一式 | 65,000円 | 店頭・兵庫県 |
| 福ちゃん | 久保田一竹の訪問着(落款つき・丹後ちりめん) | 48,000円 | 出張・大阪府 |
| 福ちゃん | 二代目久保田一竹の一竹辻が花の訪問着 | 45,000円 | 出張・東京都 |
| 福ちゃん | 田村哲彦の訪問着(落款つき) | 27,000円 | 出張・広島県 |
| 福ちゃん | 古代エジプト模様の刺繍の訪問着 | 21,000円 | 出張・福島県 |
| バイセル | 翠山の訪問着など3点 | 18,000円 | 出張・広島県 |
| 福ちゃん | 翠山工房の辻が花の訪問着(着物一式セット) | 13,000円 | 出張・香川県 |
| バイセル | 辻が花の訪問着ほか着物一式など | 13,000円 | 出張・愛知県 |
| バイセル | 前田仁仙の訪問着や袋帯など14点 | 12,000円 | 出張・東京都 |
| バイセル | 辻が花の訪問着など5点 | 8,000円 | 出張・千葉県 |
※3社の公式サイトに、2026年10月の時点で出ていた例です。買取の時期は、ザ・ゴールドが2023年1月、バイセルの翠山の例が2025年4月、福ちゃんが2025年6月〜2026年7月(由水十久の例は日付の記載なし)です。バイセルとザ・ゴールドの金額はいっしょに売ったものを含めた合計で、福ちゃんは訪問着1点の品名で掲載された価格です(翠山工房の例は一式)。

表を見ると、10万円を超えているのは、人間国宝や加賀友禅の作家など、名前だけで価値が伝わる人の訪問着です。福ちゃんの例のように訪問着1点の名前で載っている金額を見ると、藤井寛や久保田一竹、田村哲彦といった作家の訪問着は、2万〜7万円ほどに並んでいます。
一方で、翠山工房のように訪問着でよく知られた工房のものや辻が花の訪問着でも、一式や数点まとめて1万円前後という例があります。
つまり、作家名がはっきりしているかどうかで、金額の桁が変わると考えるとわかりやすいです。公式サイトに載るのは値段がついた例なので、作家のわからない訪問着はこの表よりずっと低くなると思っておくと、査定額を聞いたときに落ち着いて考えられます。

口コミに出てくる訪問着の金額は数百円が多い
公式サイトの買取例は、どうしても高く売れた例が中心になります。そこで、バイセル・ザ・ゴールド・福ちゃんの着物の口コミの中から、訪問着を売った話を探してみました。
訪問着と書いてある口コミは5件だけでしたが、その中身はこうなっていました。
| 口コミの内容 | 件数 |
|---|---|
| 1枚100〜500円だった | 3件 |
| 小さなシミがあって値段がつかなかった | 1件 |
| ほかの店の4倍以上の金額がついて満足した | 1件 |
※バイセル・ザ・ゴールド・福ちゃんのGoogleマップの着物の口コミから、訪問着を売った話が書かれたものを数えました(2026年10月時点)。福ちゃんの口コミには訪問着の話はありませんでした。

件数は少ないものの、金額が書かれた口コミは、どれも数百円でした。買ったときの値段とくらべて、落ちこんでしまったという声もあります。
スタッフの方の接客は丁寧で、楽しい時間でした。ただ、何十万円もかけて買った訪問着が500円で、着物の需要が厳しいのはわかっていても残念でした。
(口コミを要約)
買ったときの値段を知っていると、このギャップはつらいですよね。私も、査定を頼む時点で手放すつもりはあっても、大事にしていた着物に100円や「値段がつかない」と言われたら、その金額では売りたくないので、いったん考えたいと思います。
そんなときは、なぜその金額なのかを聞いてみると、納得して決めやすくなります。査定額が低くなる理由は、こちらの記事でまとめています。


訪問着の査定額を左右する5つのポイント
同じ訪問着でも、10万円を超えるものと数百円のものがあります。その差がどこで生まれるのか、訪問着ならではのポイントにしぼって見ていきます。
1.作家や工房の名前がわかるか
訪問着の値段にいちばん大きく響くのが、だれが作ったものかです。羽田登喜男・森口華弘・木村雨山といった人間国宝や、由水十久・久保田一竹のような作家の訪問着は、古くても値段がつきやすくなります。
作家や工房の名前は、着物に入った落款(らっかん)という小さな印で確かめます。衽(おくみ)や衿先に入っていることが多いので、査定の前に一度見ておくといいですよ。


2.加賀友禅や京友禅などの証紙が残っているか
加賀友禅・京友禅・東京手描友禅・琉球紅型などの訪問着には、産地や作り方を証明する証紙がついていることがあります。証紙は着物本体ではなく、端切れや別の紙に貼られていることが多いので、たとう紙の中やタンスの引き出しもあわせて探してみてください。
証紙が見つからなくても、査定はしてもらえます。生地や染めの技術から価値を判断してもらえるので、なくしたからといってあきらめなくて大丈夫です。


3.仕付け糸がついたままの未使用品か
仕立てたときの仕付け糸がついたままの訪問着は、一度も着ていないかどうかを見分ける手がかりになります。ザ・ゴールドも、未使用で仕付け糸のついた着物のほうが高く買い取りやすく、作家物では証紙と仕付け糸の有無が決め手になるとしています。
買ったまま一度も袖を通していない訪問着は、仕付け糸を取らずにそのまま査定に出しましょう。
4.身丈が長く落ち着いた色か
訪問着は、身丈が160cm以上あると、着られる人が多いぶん需要が高くなります。小柄な人は仕立て直して着られますが、短い訪問着を長くするのは難しいからです。
色は、ベージュや薄いピンク、グレーのような淡い色が好まれます。ただ、淡い色はシミや黄ばみが目立ちやすく、状態が悪いと金額が大きく下がるので、色と保存状態はセットで見られると考えておくといいです。
5.紋が入っているか
背中や胸に家紋が入った訪問着も売れます。バイセルでも家紋入りの訪問着は買取の対象で、紋があると買い手は少し限られるものの、仕立てのいいものが多いとしています。
ザ・ゴールド・福ちゃん・ウリエルも、紋のある着物を査定してもらえます。紋を消したり、ほどいたりせずに、そのままの状態で見てもらいましょう。
訪問着かどうかわからないときの見分け方
「これは訪問着なのか、付け下げなのか」がわからない人も多いと思います。見分けるときは、縫い目のところで柄がつながっているかを見てください。
訪問着は、白い生地をいったん着物の形に仮に縫い合わせ、その上から下絵を描いて染めます。
なので、肩から胸、袖、裾まで、縫い目をまたいで1枚の絵のように柄がつながっています。これを絵羽模様(えばもよう)といいます。付け下げは反物の状態で柄を染めるため、縫い目で柄が切れていて、柄の量も控えめです。
| 見るところ | 訪問着 | 付け下げ |
|---|---|---|
| 縫い目の柄 | またいでつながっている | 縫い目で切れている |
| 柄の量 | 胸・肩・袖・裾まで広く入っている | 控えめで、ポイントに入っている |
| 有名作家物の買取相場(バイセル) | 〜200,000円 | 〜80,000円 |
※買取相場はバイセルの公式サイトに載っている有名作家物の参考価格です(2025年11月時点)。


ただ、付け下げの中にも訪問着によく似たものがあるので、柄だけでは見分けにくいこともあります。
どちらか迷っても、自分で決めなくて大丈夫です。査定のときに種類も見てもらえるので、わかる範囲で「母が結婚式で着ていた」などの話を伝えると、査定がスムーズになります。
また、仕立てる前の訪問着が、仮に縫い合わせた状態(仮絵羽)で見つかることもあります。仕立て前の布は反物と同じように査定してもらえます。売るときのポイントは反物の記事にまとめました。


値段がつきにくい訪問着もある
訪問着は着物の中では需要がある種類ですが、それでも値段がつきにくいものがあります。たとえばバイセルでは、次のような着物は一部を除いて買い取りが難しいとしています。
- 夏に着る絽(ろ)や紗(しゃ)の着物
- ポリエステルなどの洗える着物
- ウールの着物
夏用の訪問着は、透け感のある薄い生地で作られています。着られる季節が短いので、中古でほしい人が少ないんです。ほかにも、シミ・カビ・虫食いが目立つ訪問着は、作家物でなければ値段がつかないこともあります。
値段がつかなかった訪問着を、そのまま引き取ってくれる会社もあります。処分に困りそうなら、引き取りについても先に確認しておくと安心です。


訪問着を査定に出す前にしておきたいこと
訪問着を少しでもいい条件で手放すために、査定の前にやっておきたいことをまとめました。どれも、家にあるものを確かめるだけでできることです。
- 落款・証紙・共八掛(ともはっかけ)や端切れを探して、訪問着といっしょにしておく
- 訪問着に合わせていた袋帯や帯締めも、まとめて見てもらう
- シミを見つけても、自分でシミ抜きやクリーニングをしない
- たたみじわがひどいときも、アイロンはかけずにそのまま出す


訪問着は、袋帯といっしょに買ったり、着たりしていることが多い着物です。帯にも値段がつくことがあるので、セットで残っているならいっしょに出してみてください。


バイセルは、入学式・卒業式のある春や、七五三のある秋の前は、訪問着がほしい人が増えやすいとしています。急いでいないなら、時期を少し意識してもいいかもしれません。
訪問着はどこで売る?作家物かもしれないなら着物にくわしい会社へ
訪問着は、作家や産地を見抜けるかどうかで金額が大きく変わります。リサイクルショップのように重さや枚数で値段をつけるお店より、着物の査定に慣れた会社に見てもらうほうが安心です。
ここでは、訪問着の買取例を公式サイトにのせている会社を中心に紹介します。
バイセル|作家物や工房物の訪問着の買取例が多い
バイセルの訪問着のページには、翠山工房や前田仁仙、辻が花の訪問着など、作家物・工房物の買取例がたくさん載っています。全国に出張してもらえて、出張料や査定料はかかりません。
店舗も全国にあるので、1〜2枚なら近くのお店に持ち込む方法もあります。どれが作家物かわからない訪問着がいくつかあるなら、まとめて見てもらうといいと思います。


ザ・ゴールド|人間国宝の訪問着で10万円台の買取例がある
ザ・ゴールドは、羽田登喜男や二代目久保田一竹の訪問着を10万円台で買い取った例を公式サイトにのせています。仕付け糸のついた未使用品や証紙つきの訪問着も、高く評価しやすいとしています。
値段がつかなかった訪問着や帯を無料で引き取って、寄付に回す取り組みもしています。引き取りの条件は申し込むときに確認しておくと安心で、売れなかったものの行き先が気になる人にも相談しやすい会社だと思います。


福ちゃん|作家物の訪問着の買取例がわかる
福ちゃんの公式サイトには、藤井寛の訪問着71,000円や田村哲彦の訪問着27,000円など、訪問着1点の名前で買取例が日付つきで載っています。手元の訪問着に近い作家のものがあれば、金額の目安にしやすいです。
証紙がない着物や紋入りの着物、シミや色あせがある着物も査定してもらえるので、「証紙が見つからない」「家紋が入っている」という訪問着でも相談しやすいと思います。
地域によっては女性の査定員に来てもらえるプランもあるので、家に男性が来るのが不安な人にも向いています。


訪問着の買取でよくある質問
辻が花の訪問着はいくらで売れますか?
辻が花は、絞り染めに描き絵などを組み合わせた染めの技法です。二代目久保田一竹の一竹辻が花の訪問着は、福ちゃんで45,000円の買取例があります。
一方で、翠山工房の辻が花の訪問着は一式で13,000円、作家名のない辻が花の訪問着はバイセルの例で数点まとめて8,000円〜13,000円でした。「辻が花」だから高いのではなく、だれの作品かで大きく変わります。
紋が入った訪問着でも売れますか?
売れます。紋があると買い手は少し限られますが、バイセル・ザ・ゴールド・福ちゃん・ウリエルは、紋のある着物も査定してもらえます。
夏の訪問着(絽・紗)は買い取ってもらえますか?
会社によって扱いが違います。バイセルでは絽や紗の着物は一部を除いて買取が難しいとしているので、夏用の訪問着が多いときは、申し込むときに確認しておくと安心です。
30年以上前の古い訪問着でも売れますか?
古いだけで値段がつかないわけではありません。作家物や伝統工芸品の訪問着なら、古いものや多少のシミがあるものでも価値がつくことがあります。ただ、作家も産地もわからず、シミが目立つものは値段がつかないこともあります。
訪問着1枚だけでも査定してもらえますか?
1枚だけでも大丈夫です。福ちゃんは1点から査定してもらえますし、バイセルも単品で見てもらえます。着物や帯がほかにも残っていれば、いっしょに出すと一回の査定で片づきます。
訪問着のほかにも着物があって、どの会社に頼むか決めかねているなら、3社の口コミを同じ基準で読みくらべたこの記事が役に立つと思います。


まとめ|訪問着は「だれの作品か」で値段が大きく変わる
訪問着の買取相場は、公式サイトでは「〜20万円」「〜80万円」と書かれていますが、それは人間国宝や有名作家の訪問着の場合です。実際の買取例や口コミを見ると、作家名のわからない訪問着は安くなることもあり、1枚100〜500円だったという声もありました。
だからこそ、落款や証紙、仕付け糸など、価値を伝える手がかりは捨てずに残しておきたいところです。金額に納得できなければ、理由を聞いてから決めても大丈夫だと思います。
大切に着てきた訪問着だからこそ、まずは着物にくわしい会社に一度見てもらって、手放すかどうかをゆっくり考えてみてください。



